薩摩琵琶の流派で、鹿児島に伝わっている弾き方に最も近いといわれている会派に「正派」があります。
その「正派」の一つ、「正絃会」の方々が先月7月30日鹿児島に来られました。
事のきっかけは、数年前に私が東京に行く用事があった時、ご縁があって正絃会にお邪魔する機会があり
その後も数年来、東京に行く度に度々お世話になっておりました。
さらに、私の兄弟子方も同じように東京にてご縁を持ち続け、いずれは鹿児島の地にて
正絃会の皆様にも来ていただけたらと思っていました。
そんな中、6月に、会代表の須田先生はじめ、お弟子さん方々が熊本講演の帰りに鹿児島に寄るとの事。
早速、鹿児島でも演奏会をとの運びとなり、それならばと千巌園の茶室「秀成荘」を会場に、島津家御当主を
はじめ、鹿児島の名士の方々、一般聴衆の方々に、東京と鹿児島の今の薩摩琵琶の世界を堪能して
頂こうと企画しました。
当日は快晴の夏空、桜島と錦江湾の青い輝きが眩しすぎるくらいの絶好の日和!!
俄然私たちも気合が入り、まさに世紀の邂逅を感じさせる思いでした。
第一部の演奏は始めに東京から女性がお二人詩吟を披露。
その後、鹿児島の天吹。薩摩琵琶と双璧をなすその調べに、早速格調高い時間が流れ始めました。
その後は私が最初に「春日野」、そして山下氏が「城山」、島津氏が「小敦盛二段前半」
さらに正絃会の石田氏が「小敦盛二段後半」と続きました。
第二部は正絃会の須田師の「潯陽江」・・・この曲は唐の白楽天の詩「琵琶行」を、和訳した
名曲で、洗練された弾き方が印象に残りました。
そして前村師の「彰義隊」・・・言わずと知れた江戸時代の終わりに徳川家家臣が新政府に
東京の上野で抵抗した際の様子を琵琶歌として残したもので、名曲の一つですが
御年97歳の迫力のある演奏は東京・鹿児島問わず、感慨深い弾奏でした。
歴史の瞬間のひとコマでしょうが、疎遠になっていた繋がりが今回のこの会をきっかけに
お互い交流を深め、薩摩琵琶の発展に繋がっていくことを願う事でした。
最後に龍洋会の前村師の一言
「東京の琵琶は洗練されて非常に美しい。鹿児島の琵琶は荒削りだ!!しかし、東京の洗練された琵琶も
美しいが、荒削りなのが鹿児島だ!!」この一言がお互いの違いであるが、お互いの特徴の妙を
言い当てている。雑ではない。美しくは無いが、このことこそが鹿児島なんだなぁと思った瞬間だった。
今のままを伝えて、そして努力していこう。
この会から得た思いでした。
写真は最後の全員での弾奏「門琵琶」秘曲です。
前村師の弾奏。